ゲームシステム
〔運命歪曲〕の増加
イニシエータ
(ルールブック76ページ、他)
「さて、雨野君。今回は新人のジーニアスに、〔運命歪曲〕について教えてあげてほしい」
「〔運命歪曲〕について、ですか。基本中の基本ですが、少々説明が長くなります。って、……ラカナ少佐?」
「Zzz...おっと、少しうたた寝をしてしまったようだ。続けてくれ。できる限り、手短にな」
「……仕方ありませんね。私の言葉が不足するかも知れません。少佐からも適宜補足をお願いします。だから、ちゃんと起きていて下さいね?」
「Zzz...うん? ああ、もちろんだ。ぞ。Zzz...」
「あー、もう! 一切期待せずに進めるわ。〔運命歪曲〕のゲーム世界における設定は、本ホームページの『叛逆者とネオプラズム』の解説を読んでね。ここからの説明は、セッションの進行における〔運命歪曲〕の意味についての説明に重点を置くから」
「Zzz...おっと、セッションとかシーンなどの、ルール的な用語についての説明は省かせてもらうよ。分からないのであれば、なんとなくのイメージを掴んでくれ」
「簡潔に言えば〔運命歪曲〕とは、私達ジーニアスの敵であるネオプラズムの、力の源よ。困ったことに〔運命歪曲〕は時間の経過と共に影響力を増していくわ。ゲーム的には、PC(プレイヤーキャラクター)がシーンに登場すると〔運命歪曲〕が増加する、と思ってもらうのが分かりやすいかしら」
「もちろん、シーンに登場せずに物語を進めることはできない。後で雨野君から改めて説明があるが、『叛逆レゾンデートル』のシーン登場は〔運命歪曲〕の増加と[愛]の消費のいずれかを選ぶのが基本になる」
「〔運命歪曲〕の増加は、私達ジーニアスにとって大きなリスクとなるわ。まず、〔運命歪曲〕には上限があって、それを超えると全てのPCが死亡するなどの末路を迎えた上で、ゲームに敗北するの。シナリオ上の敗北というだけの意味ではなく、実際にPCは全滅するから、これは絶対に避けなければならないわ」
「驚くのも無理はないが、これは事実だ。ジーニアスは英雄的と呼べる程度に強力な存在ではあるが、それでも〔運命歪曲〕の暴虐を前にするなら、決して万能の存在ではないと知った方が良い。『叛逆レゾンデートル』では、戦うまでもなく〔運命歪曲〕の暴走によって我らは敗北することがある」
「そうは言っても対処法はあるけれどね。詳しくはルールブックを読んでほしいのだけれど<歪曲ディレイ>という、〔運命歪曲〕による破滅を先送りする手段は用意されているの。けれど、それで時間稼ぎを続けるのは、根本的な解決にならないわ。〔運命歪曲〕のもうひとつの問題は、増えれば増えるほど宿敵のネオプラズムが強化されることよ」
「Zzz...」
「思ってたより耐えたわね。しばらく放置しておきましょう。とにかく〔運命歪曲〕を増やし過ぎないようにセッションを進めること。では、シーンの登場や、そのためのリソースである[愛]について、引き続き説明するわ」
解説者紹介
TNFタージュエ=レナ支局の最高責任者。極寒のバルバディオス大陸出身のジャックフロストです。優秀なジーニアスではあるものの、油断するとすぐに眠ってしまうのが玉に疵。
ラカナ少佐
雨野祟理
ラカナ少佐の秘書です。自身もジーニアスではありますが、戦闘よりも後方支援や事務に適性があります。船幽霊なので嵐が好きな一方、水に濡れると破れる紙の書類を嫌っています。
シーンへの登場
「このゲームでは、セッション進行の際にシーンの概念を採用しているわ。詳細はルールブックを読んでね。ま、最近はシーン制じゃないTRPGの方が珍しいけど。そうね……例えばCoCしか遊んでない人の場合は縁がないかしら。因みに、ここでは歪曲シークエンスにおけるシーン登場について解説するから、それ以外についてはルールブックを読んでね。歪曲シークエンスという言葉の解説も、悪いけど省略するわ」
「キャラクターはシーンに登場しなければ、行動ができない。例外もあるがね」
「あ、起きた」
「そして、セッション中に最も長い時間遊ぶことになる歪曲シークエンスの間、PCのシーン登場に際しては〔運命歪曲〕が増加してしまう。これは物語の進展につながるが、それはそのままタイムリミットが近付くことにもなってしまうわけだ」
「ですね。ただ、PCはシーン登場のリソースを持っているわ。それが[愛]よ。ルールブックから引用すると、キャラクターの想いの強さや好奇心を表現する数値ね。消費すれば〔運命歪曲〕を増やさずにシーンに登場できるの。自分以外のPCの登場にも使えるわ」
「Zzz...ん? ああ、起きてるぞ。少し設定温度を下げよう。さて、PCはシーンに登場することで、様々な行動を行える。〔運命歪曲〕の上限を増やす<歪曲ディレイ>は特に重要だな。もっとも、これは時間制限にしか……」
「そこはさっき説明しました。他にも<情報収集>とかができるわね。ただ、最も重要なのは〔レゾンデートル〕の取得とロールプレイよ」
「では、引き続いて〔レゾンデートル〕に関連するところを説明しよう」
〔レゾンデートル〕
「ようやく肝心のところに入るわね。叛逆とかレゾンデートルとか意味分かんないバカじゃないの、とか思ってた人は、ここからが本題だと思ってね」
「そんな攻撃的な読者はそうそういないし、いたとしてもここまで読み進めないと思うのだが……。まあいい。進めてくれ」
「コホン。では説明します。このゲームのPCたちは叛逆者(ジーニアス)と呼ばれているけれど、叛逆するのは歪んだ運命、とりわけその申し子であるネオプラズムよ。ただ、彼らとの決戦に至るには、それぞれのPCが存在理由を見出す必要があるの」
「少々、抽象的に過ぎる説明だな。PCは、シーンに登場した際に、自分自身の目的や感情などを表す〔レゾンデートル〕を取得できる。これが歪んだ運命に叛逆する力の源になる、といったところだ。この〔レゾンデートル〕はシナリオなどで指定されるのではなく、プレイヤー自身が自由に内容を決めることができる」
「補足ありがとうございます。〔レゾンデートル〕の内容はPLが自由に決められるから〔〇〇を守る〕とか〔敵に逃げられて落ち込む〕とか、都度のPCの状況に合わせて工夫して取得してね。あと、別の視点から説明すると〔レゾンデートル〕はPCのロールプレイを支援するためのルールと言えるわね。そういうロールプレイの方針も含めて、自分のPCが何をしたいのか、どんなことを考えているのか、〔レゾンデートル〕で表現できるの」
「もちろん、〔レゾンデートル〕はただPCの表現をするためにあるわけではない。そのロールプレイによって、PCは〔叛逆の灯(コーデックスフレーズ)〕を獲得できる」
「〔叛逆の灯〕は、消費することで様々な恩恵を受けられるわ。それらの能力は〔存在証明(デモンストランドゥム)〕と総称しているの」
「更に、通常の〔レゾンデートル〕とは別に、一定条件を満たすことで取得できる〔叛逆レゾンデートル〕がある」
「〔叛逆レゾンデートル〕は、PCたちがラストバトルに挑む直前に、叛逆シーンでロールプレイする特別な〔レゾンデートル〕よ。それによって得られる〔叛逆の魂(コーデックスチャプター)〕は、PCたちの切り札になるわね」
「〔叛逆の魂〕を消費しなければ使用できない〔存在証明〕があると理解して欲しい。具体的な内容はルールブックを参照してもらいたいが、例えばダイス目を自由に変えたりできると言えば、その強さは理解してもらえるだろう」
「〔レゾンデートル〕についてはこれぐらいでしょうか? 今回はきちんと起きていられましたね、少佐?」
「はっはっはっ、私がいつも寝落ちしていると思ってもらっては困るね」
「…………………………さてと、今回説明するところはこれぐらいかしら。行為判定とかについては、別の人たちに任せましょう」
「外部の者に頼るのは不安だが……いや、雨野君が任せられると判断したなら大丈夫だろう。それでは、私たちは本来の任務に戻るとしよう。Zzz...」
イラスト:とび様
イラスト:MACCO様
(ルールブック36ページ、他)
(ルールブック30ページ、他)
解説者紹介
マシュー=スカンラン
タージュエ=レナの流通や軍事を担う大企業スカンランズ・ゲートの重役です。同社の抱える海兵隊の指揮官でもあり、TNFとも協力関係にあります。3回の離婚歴あり。
イラスト:KOJI様
イラスト:たこ焼き様
カノツェナッハ=ギィ=ユ
タージュエ=レナで活動する新聞記者にして情報屋です。全長25mの竜の淑女ですが、街で活動するために子供サイズの分体をあちこちに放っています。
行為判定
「さて、ちゃきちゃき進めるぞ。このゲームは基本的に10面ダイスを使う。判定はもちろん、ダメージロールもな。ま、ダメージについてはホームページでは解説する予定は無いが」
「ちょっと待ちなさい。判定という言葉の意味は説明しないのかしら?」
「んなモンTRPGやってるヤツなら分かるだろ? 大体、全部説明するならルルブなんざいらなくなる。で、判定は【判定値】の数だけダイスを振って、〈技能〉のレベルの個数まで選んで、足して終わりだ」
「さすがに端折りすぎよ。ダイス目の読み方は説明する必要があると思うわ。大抵のTRPGで、10面ダイスを使う場合は出目を1~10と読むのだけれど、『叛逆レゾンデートル』では0~9になるの。ちょっと特殊だから、勘違いしないように注意するべきところね」
「普通の10面ダイスは0~9の数字が書いてある。なのに1~10と読む方がおかしいんだよ。それはさておき、よく分からんって顔してるようだから、もう少し詳しく説明するぜ。まず、【判定値】ってのは、キャラクターの基本的な能力を表す数値データだ」
「具体的には【身体】とか【覚悟】とかね。全部で5種類あるけれど、詳細はルールブックを読んでほしいわ。行為判定の際には、その数値に等しいダイスを振るの。【身体】が5なら、5個の10面ダイスを振る、といった感じね。当たり前だけど、それぞれの【判定値】は高い方が優秀よ」
「そして、〈技能〉はもう少し専門性の高い技術や知識なんかを表すデータだな。全部で13種類あるからいちいち説明しないぞ。ルルブ読め。これもレベルが高い方が優秀だ。余談だが、俺は【判定値】も〈技能〉も全体的に高くて優秀だぞ」
「いや、あなたも私も、別にルールブックにデータが書いてあるわけじゃないし、優秀かどうかはGMの匙加減ひとつだと思うのだけれど……。まあ、どうでもいいわね。〈技能〉は、それぞれに対応する【判定値】が決まっているのよ。例えば、〈運動〉と〈技術〉は【身体】で判定することになるわ」
「要するに、【身体】が5ならダイスを5個振る。〈運動〉のレベルが2なら、振ったダイスを2個選んで、それを足した数字が達成値だ。達成値が高ければ、より優れた結果だったということになるわけだな」
「そんなところね。更にファンブルやクリティカルのルールもあるのだけれど、その辺りの説明はホームページにおける最低限の解説を逸脱するかしら」
「そうだな。できればルルブを読んで欲しいが、どうしても内容を知りたいならサマリーを読んでみるのもいいだろう。TRPGをある程度遊んでいるなら、大体理解できるはずだ」
《特技》と“ギフト”
「《特技》と“ギフト”ね。重要なところではあるが、全部説明してると日が暮れるんじゃないか?」
「それぞれの意味合いと、取得する際の考え方を説明することになりそうね。ロールとタレント、常備化の概念も含めて解説するとして、細かい使い方やデータの見方は、ここでは省略しましょう」
「そんなところだな。正直、いくらホームページの最低限の解説とは言え、とっ散らかってる感はあるが……。ま、まずは《特技》からだ。これの基本的な考え方は難しくない。読んで字の如く、キャラクターが持つ特殊能力のことだ」
「《特技》の取得に際しては、キャラクター作成のルールを理解する必要があるわ。PCの場合、物語上の役割を表現するロールと、得意分野を表現するタレントを組み合わせて作成するの。そして、《特技》はそれぞれのロールやタレントに特有の能力よ」
「補足しておくと、ロールやタレントは、他のTRPGの職業やクラスの概念に近いと言えば近い。ロールによってPCの【判定値】の基本値が決まるし、タレントはほぼ職業と同義だな」
「ロールは全部で6種類があるわ。英雄的な人物を表すヒーロー、キャラクター間の懸け橋となるムードメイカー、みたいな感じね。一方、タレントは、設定上は17種類があることになっているけれど、ルールブックに掲載されているのは10種類よ。17種類という区分は、TNF内部で決められているという設定ね」
「設定云々はこの際どうでもいいだろ。タレントは、白兵戦が得意なレギオ、学者みたいなアカデメイア、魔法使いっぽいミューティストとか色々ある。ロールは1種類しか取れないが、タレントは3個まで取れるから、その組み合わせで割と幅広いキャラクターを作れるぜ」
「ミューティストを魔法使いと呼ぶのは誤解を招くから、個人的には賛成できないけれど……。とにかく、ロールとタレントでキャラクターの基本的な方向性が決まるわね。そして、それぞれのロールとタレントが持つ固有の《特技》を取得して、キャラクターは様々な活躍ができるようになる、というところね」
「レギオだったら剣や斧でぶん殴ったり、仲間を庇うための《特技》が用意されている。アカデメイアの場合は、味方のダイスを増やす支援能力やら、武器を改造して強化する《特技》なんかがあるな。ミューティストは……説明が難しいな。攻撃から情報収集、特殊な“ギフト”の取得まで、幅広い能力を持っている感じか」
「《特技》についてはこの辺りにしておきましょう。《特技》と言うよりもロールやタレントの説明になってしまっているけれど……。ちょうど“ギフト”という言葉が出てきたから、次はそちらの解説をするわね」
「《特技》と比べれば、まだ説明は少なくて済みそうだな。ま、“ギフト”ってのは他のゲームのアイテムと大体同じだ」
「一般的には“白兵武器”や“射撃武器”、“防具”といった感じで種類を分けているわね。中には“資本”という、ちょっと珍しいタイプの“ギフト”もあるけれど」
「最近じゃ、その手のデータも珍しくないだろ。まあ、“資本”以外は基本的に装備して使用する。古式ゆかしいRPGの基本だな。装備部位は割と細かく分かれているんで、その気になれば10個とか20個の“ギフト”を使うキャラクターも遊べなくはないぞ」
「理屈の上では、ね。当たり前だけれど“ギフト”はいくらでも手に入れられるわけではないわ。このゲームではお金で“ギフト”を購入するのではなく、常備化というルールによって取得するの」
「常備化の概念も、TRPGでは決して珍しいものでもないが……念のため解説しておくと、一定のルールに従って“ギフト”を常備化すれば、セッション中に失っても次のセッション開始時には、またその“ギフト”が使えるようになる、というルールだ。ちと要領を得ない説明で悪いが」
「具体例で説明すると、常備化した“ポーション”を使ってしまっても、次のセッションには、また未使用の“ポーション”が貰えるルールといったところね。名前の通り、常備化した“ギフト”は、キャラクターが常備しているということになるのよ。ただ、使わなかった場合に、次のセッションでその“ギフト”が増えるわけではないけれど」
「それ以上の正確なところはルルブを読んでくれ。とにかく、“ギフト”は基本的には常備化というルールで取得する。それで、この常備化の時には〈縁故〉という〈技能〉が重要になる。〈縁故〉を取ったら“ギフト”を常備化できる、というルールになっているわけだ」
「〈縁故〉はやや特殊な〈技能〉で、特定の人物などとの関係を表現するわ。だから〈縁故:雨野祟理〉とか〈縁故:TNF〉みたいに、人物や組織ごとに別々に取得できるの。ひとつの〈縁故〉で1個の“ギフト”を常備化できるから、仮に10個の“ギフト”を活用したいなら、〈縁故〉を10個も取らないといけないわね」
「他に、さっきも触れたように、《特技》の中にも特定の“ギフト”を常備化する効果を持つ場合がある。通常の〈縁故〉による常備化とうまく使い分けてくれ。“ギフト”についてはこれぐらいか?」
「そうね。これで祟理嬢に頼まれた仕事は完遂したかしら」
「思ったよりも長くなっちまったな。あの嬢ちゃんの仕事はいつも面倒だぜ。あー、クソッ! こりゃデートは完全に遅刻じゃねぇか! 悪いが後始末は任せた! アデュー!」
「慌ただしい男ね……。一応まとめると、キャラクターは、主にロールとタレントの組み合わせで表現するわ。それぞれに固有の《特技》を取得できるのよ。一方、〈縁故〉によって常備化する“ギフト”も活用できるわね。《特技》と“ギフト”の相乗効果によって、自分の思い描く様々なキャラクターを表現できるはずよ。さて、次はセッションの中でお会いできるのを楽しみにしているわ。それでは、ごきげんよう。」